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マイオモニターは、持続時間0.5ミリセカンド、電圧11〜12ボルトの矩形波パルスを1.5秒に1回発生する装置で、左右下顎切痕から頚部背面正中部に向けパルスを送ることで第V・第VII脳神経幹を経皮的に電気刺激(TENS)し、第V・第VII脳神経支配下の筋の一過性同時収縮を惹起することで、咀嚼筋の異常な緊張を緩和し、筋リラクゼーションがはかれる理学療法装置です。
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マイオモニターの生理学的効果
1. 三叉神経第3枝と顔面神経支配下の筋に不随意の筋収縮を起こさせる。
2. ポンプ作用により、過緊張の筋から老廃物や乳酸が洗い流される。
3. 血流が改善し、O2,ATP,Glucose,Caイオンが筋へ供給される。
4. 筋の代謝系が乳酸回路からKrebs(TCA)回路へ変化する。
5. 脳内モルヒネ様物質のエンドルフィンが産生される。
6. 咀嚼筋の固有受容の再構築(教育)効果がある。
このマイオモニターに筋リラクゼーション効果と疼痛緩和効果があることに異論を唱える人は殆どおりませんが、生理的に運動中枢(第V脳神経)を刺激することで筋収縮を誘発しているかについては、様々な意見があります。中には市販の低周波治療器と変わらないとか、顔面神経しか刺激していないといった偏見をお持ちの人さえいますが、少なくともマイオモニターを30分〜60分使用した前後の咀嚼筋群の安静化を筋電図で確認しながら、最大の目的である生理的下顎安静位を獲得することは、単なる低周波治療器や顔面神経刺激だけでは不可能と言えます。
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上図は、TMD患者で当時42歳女性の筋電図(EMG)記録です。左側は、初診時の咀嚼筋群の安静時筋電図の掃引記録で、開口筋・閉口筋ともに発火が認められ、筋疲労しています。右は、同日マイオモニターで40分パルシングした後の状態です。1回の治療で全ての筋のリラクゼーションは得にくいですが、パルシング前と比較して有意に筋緊張は減少しており、この状態で咬合採得(マイオバイト)し、アプライアンス(オーソシス)を作成・使用していただき、下顎機能のリハビリをはかります。何度かのマイオモニターによる咀嚼筋の安静化とアプライアンス(オーソシス)の調整をはかった後、最も安定した信頼しうる下顎安静位(生理的下顎安静位)を獲得していく訳です。
マイオモニターが単なる低周波治療器と異なる理由
筋を支配する神経幹に電気刺激を加えて、当該筋からEMG(エレクトリックマイオグラフ)を誘導すると、刺激によって誘起された筋収縮は、誘発筋電図のM波とH波の形で記録されます。M波は筋の運動神経を直接刺激して誘導され、咀嚼筋では潜時約2マイクロセカンドです。これに対し、H波は求心性神経が刺激され、その興奮が延髄や脊髄でシナプスを介して運動神経の興奮となり、結果筋が興奮し誘導されるもので、咀嚼筋では6マイクロセカンドでH波が現れます。
Fujii and Mitaniは、マイオモニターの刺激でその支配下の筋電図にH波が記録されることを確かめました。即ち、マイオモニター刺激には遠心性と求心性の効果(筋の緊張を促進する中枢からの遠心性インパルスを最少に抑制する効果)のあることが示されたわけです。
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上段の図は、マイオモニターによるパルシング(マイオパルス)時の筋電図で、左側(aからd)の安静時のものと比較して、右側(a'からd')の等尺性筋収縮させた場合にH波が認められるFujii and Mitaniの研究です。 下段の図は、筋緊張のある患者の下顎安静位の変動をMKGで掃引記録したもので、非常に不安定な下顎位であるのがお分かりいただけると思います。右側はマイナートランキライザー服用30分後の記録で、服用前より安定していますが、上下振幅が大きく不安定な状態です。
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上図左側は、同一患者に30分マイオパルシングした時の記録で、0.5mmの上下幅で下顎安静位は安定しています。右側は、無歯顎患者に上から5分・15分・25分マイオパルシングした時の経時的変化を記録したもので、下顎安静位が安定していく過程がお分かりいただけると思います。
また、マイオモニターは、有歯顎者の咬合採得以外にも義歯の作製にも使用されます。マイオモニターを使用し、印象採得・咬合採得して作製された義歯をマイオデンチャーと呼び、非常に適合の良い機能性・審美性に優れた義歯作製が可能となります。詳細は、マイオデンチャーの項目をご覧ください。
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